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Sword of A's Act.7 vol.2
12月6日 AM:8:00 月村家
次の日からノエルの指導が始まった。
まずは掃除。
「まず、この部屋の掃除をお願いします。私はこの外の廊下の掃除をしていますので、何かあれば声をかけてください」
「あ、はい。分かりました」
それを聞いた士郎が頷くのを確認し、ノエルは一人、部屋の状態を観察する。
あの後、すずかからの話で、ノエルもかなり士郎に気を許していたが、それでも万が一、と言う可能性を考えてしまう自分は臆病なのであろうか? そんな事を考えて少々自己嫌悪に陥ってしまうが、無論、その事を面に出すような事はしない。
ここは客間でも普段使わないような奥まった部屋の一つで、この隣に部屋は存在せず、また出入り口は今ノエルが立っている扉を除けば、子供一人がどうにか通れるか、と言った程度の隙間しかない窓があるだけである。
扉から出る場合にはまず気付くであろうし、よしんば窓から出られたとしても今の時分庭の掃除を担当しているファリンの目に付かずに行動する事は難しい。つまりこの部屋から、誰にも気付かれる事も無く出て行く事は不可能と言えた。
もし、力付くでこの部屋を出る気ならば、そもそもこんな搦め手を使ってまで取り入ろうとはしないはずであるし、それほどの力があるならばむしろ夜半、皆が寝静まった頃に行動した方が効果的であろうという考えもある。
以上の事から、取り合えず主人に危害を加える要因が無い事を確認すると、ノエルは士郎に、掃除が終わった後に声をかけてくれるようにだけ頼み、その場を後にした。
そして、それぞれが作業を開始してから一時間弱。一段落したノエルが、士郎の状況を確認する為に、士郎が担当する部屋へ様子見のために踏み込んだ時……それを見た。
(……? 何だかいつもと違う感じが……?)
いつもよりも明るい感じがする。それが最初にノエルが受けた感想だった。それが中に入って詳細を確認した後、疑問は驚きに変わる。
部屋の大きさは、大体、2LDKマンションの一部屋ほどであり、普通の人間が掃除をするにはちょっとした大掃除ぐらいの規模になってしまう。まあノエルも士郎に関してはあまり掃除の技術というものを期待してはおらず「そこそこに」綺麗にできれば良いので根を詰めないようにと言っておいたのだが……それが今は見違えるようである。
全体的に徹底して磨き上げられた窓と調度品。埃一つ無い床、皺一つ無いベッド、窓から差し込む光に照らされて、微かに光っているようにすら感じる壁。その変化にノエルは暫し見入ってしまっていた。
「あ、ノエルさん」
「え……?」
そのとき聞こえた声に振り向くと、そこには、執事服の上にエプロンを付け、埃を被らないように三角巾を被った……その姿がやけに様になっている衛宮士郎、その人の姿があった。
「えっと、衛宮さん。これは全部衛宮さんがやったんですか?」
「あ、はい。あとこの窓を拭けばここの分は終了ですが」
「な――――」
まるで何でも無いように言ってのける少年に、改めて驚きを感じるノエル。
確かに、自分も同じような事は出来なくは無い、しかし、この少年のように細かい所までやっていれば……熟練のノエルであっても全てを終えるのにこの倍は時間がかかるだろう。それは何の誇張も無い、客観的な事実である。
「……本当にこれ全部一人でやったんですか? 誰の助けも無く?」
「はい。この後、ノエルさんに出来上がり具合を見てもらおうかと思ってた所なんですけど……どうでしょう?」
「どうでしょう、と言われても……」
良いも悪いも無い。ほぼ完璧と言って良いほどの出来上がりだ。
その後に掃除の方法、調度品の手入れ等仔細なやり方も一応確認してみたが……そのどれもが完璧であり、その事もノエルを驚愕させる一つの要因となった。
そして、食事。
料理も出来る、との事だったので、厨房で賄いがてら料理を作らせて見ることにしたノエル。
材料、その他の調味料などの場所を伝え、取り合えず今ある材料で何か一品作ってみてくれと言った。
この時点で、ノエルとしては、出来て家庭料理の延長ぐらいだろう、と考えていた。確かに掃除の際のスキルはかなりの物であり、それだけで執事の経験があるということは十分すぎるほど実感できたが、それはたまたま、掃除に関するスキルが特化していた為と考えられなくも無い。
だが、その考えがすぐに間違いだとノエルは思い知る。
何気なく視線を士郎に移した時……丁度、士郎が包丁を持ったその瞬間、微かな違和感にノエルは眉を顰(ひそ)めた。
(……?)
ほんの一瞬の事だったのだが、彼の目が変わったように感じたのだ。
そう、例えるなら、獲物を狙う猛禽類の目と言えば良いだろうか? 料理人としての気迫と言うか、なんと言うか、台所に立った瞬間に、そんなオーラのような物が立ち上った気がしたのだ。
それに、何かを感じるその直前――――。
断、と。
まるで、戦いが始まるかのような大きな音が響き、驚きに一瞬目を見開く。
(っ!)
それからは正に怒涛の展開である。
まるで残像を残すかのように高速移動する体と、そして踊るかのように舞う食材の数々。
食材を高速で刻み、火にかけた鍋を振るう様は、まるで中華料理の料理人の如く豪快でありながら繊細さすらも感じた。
その動きにも全く無駄が無く、プロの料理人顔負けの早さで次々と工程をこなしていく様は、正に一個の芸術と言っても良い位である。
料理が出来るまでに要した時間は三十分ほどか。正直に言えば開始五分程度で時間の感覚など無くなっていたので、後はノエルの予想による物ではあったが。
「……ノエルさん?」
「え……あ、ああ。すみません」
暫し呆然としていたノエルが、その声に気付いてテーブルの上を見ると、既に盛り付けられた料理……中華風に炒められた野菜炒めが湯気を上げている。
(凄まじいですね……こんな風に料理を行う人を見たのは初めてです)
そんな風に考えながら、香ばしく食欲をそそる湯気を上げる野菜炒めに箸を入れ……それを徐に口に運ぶ。
「――――」
全くの無言になってしまった、その姿に不安そうな表情を浮かべる士郎。
だが、無表情にノエルは咀嚼を繰り返し――――。
やがて、ゆっくりと布巾で口を拭いた後に、表面上は無表情に士郎を見つめた。
「衛宮さんは――――料理をどこで習っていたのですか?」
何となく静かな威圧感を感じたのか、若干引き気味になりつつも、士郎が口を開く。
「え、えーと、ウチは片親で、爺さん……父親が家事全般全く駄目な人だったんで、物心付く頃には自然と……その後は、ある人の伝手(つて)でイギリスで色々と……あの、それが何か?」
そう言いながら、僅かに冷や汗が滲む額を気にする士郎をじっと見つめ、そのままの表情で更に質問するノエル。
「いえ……では、作れる料理はこの他にもあるんですか?」
「あ、はい。和洋中一通り。まあ、一番得意なのは和食なんですけど、知り合いに洋食派が多くて、最近は作る機会がなかったので、腕は落ちているかも知れないですけど」
「そうですか……」
そう言って彼女は一つ息を吐くと、徐に士郎を見つめた。
「火の加減、食材の炒め具合、調味料の加減、その他において――――完璧です。ここまでおいしい野菜炒めはかつて味わった事がありません」
彼女自身のそれは正直な感想だった。
一体どのような経験をすれば、ここまでの料理を作れるものか。想像がつかない。
自分がこれを真似しろと言われても……一朝一夕で出来る物ではないのは確かだ。
この後、ファリン、そして後日、忍、そしてすずかがノエルと同じ反応……料理を口にした後、暫く無言になってしまった事を、後述しておく。
この後も、機械や日用品の修理について忍が舌を巻いていたり、
驚異的な身体能力で、木に引っかかった洗い物を取り上げたり、
屋敷がほんの数日で見違えるように綺麗になったり、
何故か麻婆豆腐を作る時だけは渋面になったり(本人曰く、嫌な思い出があるらしい)
彼の驚異的な行動に驚きを挙げるなら切りが無い。
「士郎さん、本当に凄いですね」
「うん?」
やがて――――数日が過ぎ、当初の出会いからすっかり打ち解けたファリンが徐に放った言葉に、士郎は振り向く。そこにはキラキラとした羨望の眼差しを向けるファリンの姿があった
「一時期、執事のお勉強をしてらっしゃったんですよね? その時に指導する先生はいらっしゃったんですか?」
「あー、まあ、な」
何となく、持ち上げられた事が恥かしいのか、人差し指で頬を掻きながらファリンの質問に答える士郎。
「その先生は、どんな人だったんですか?」
「え……?」
ファリンの続けたそんな何気ない言葉、その事に、目に見えて言葉に詰まる士郎。その様子に、ファリンは触れてはいけない過去に触れてしまったと感じ、慌てて言い繕う。
「あ……すいません。配慮が足りなくて」
心からの謝罪。それに対し、士郎はいつもと変わらない、困ったような苦笑を浮かべた。
「いや、気にしないで良いよ……そうだな、どんな人だった、か」
そこで一旦言葉を切ると、窓の外へ視線を移す。
その視線に映るものは一体何か……何処か懐かしそうに遠くを見つめながら、士郎は語りだした。
「そうだな。二人いたんだけど、殆どはセラ……ああその『先生』の一人になるんだけど、その人が教育してくれてさ……」
元々、2年という短い期間ではあるが、士郎がイギリスへ行ったのは留学のためだったという。早くに両親、そして養父を亡くした士郎は、かなり早い頃から一人暮らしをしていたらしく、知り合いの伝手で渡航費用までは何とかしたそうだが、生活費は自分で稼がなくてはならなかったそうだ。(当時はまだいた、親戚筋にあたるドイツ出身の義理の妹や、家族同然の付き合いをしていた人達に頼る事は、最初から良しとしなかったそうだ)
そこで現地のアルバイトを探して悪戦苦闘している時に、たまたま会った少女……金髪にブルーのドレスを着た少女に紹介されたのが……。
「それが執事だったんですか?」
「ああ。まあ紳士淑女のお膝元だし、家事なんかは昔から得意だったからね。それに住み込みで働けるんなら家賃も浮かせられるし、すぐに了承したんだ。けど……」
「けど?」
その後が大変だったとの事だった。
聞けば、先ほどの血の繋がらない妹というのも、かなりのお嬢様であったそうで「何も教育をしていない士郎に粗相はさせられない」との一言で、彼女の世話役の一人であるセラが教育係に付いたとの事だった。
ここから地獄の特訓(の名を借りた虐め)が始まる。
掃除をして埃が溜まっていようものならば、窓枠に指を走らせ、「こんなに埃が……」と言い、
食事を作れば「こんな物が料理と言えると思っていますか」と嫌味を言い、
洗濯は「繊細に、かつ素早く大胆に」という為に成るんだか何だか分からない事を言われ、
元々、自らの主に近づく士郎を快く思っていなかったこともあり、その他、ありとあらゆる手で徹底的に鍛え上げられた(虐められた?)らしい。
暫くは黙ってその話を聞いていたファリンだったが……やがて、半死人のように、または悟りを啓いた賢者のように徐々に変化していく士郎の表情に耐え切れず、先ほどとは違う意味で触れてはいけない過去に触れてしまったと思い思わず声をかけようとした……丁度その瞬間。
「――――でも、何だかんだ言っても、俺の事を考えていてくれた事は確かだったし、それに応えたいって思ってたから、辛かったけど、嫌では無かったよ」
「あ……」
その時の士郎のその表情……まるで無垢な子供のように純粋で、かつ、自分よりもずっと大人びた、矛盾した要素を持ち合わせた笑み……を、かける言葉も失い、見上げるファリン。
その心情は兎も角、少々無愛想な表情が多い士郎が向ける初めての笑みに、思わず見惚れていた、と言っても良かった。
「……寂しくは無いんですか?」
その時、突いて出た言葉は、ファリンにとっても意外な事だったそうだが……それでも聞かねばなるまいと、その時は思った。
士郎は、唐突にそんな風に聞かれたことに、最初は驚いたようにファリンを見つめていたが……やがて、その表情をじっと見つめた後、一言、呟いた。
「そうだな……確かに寂しくないって言ったら嘘だけど……でも、いつかまた、何処かで会える可能性はあるし、そんなに悲観した物では無い、かな? 自分ではそう思っているよ」
彼が前に説明した所によると、イギリスでの知人や冬木と言う街での知り合いは、今は皆離れ離れになり、行方も分からない状態らしい。その事について理由を聞いたところ「自分が悪いから」という自嘲気味な苦笑と共にはぐらかされた。皆も触れて欲しくない過去なのだろうとその時は感じ、誰もその事についてはそれ以上質問はしなかった。
だが、彼は言う。離れ離れになってもあきらめてはいないと。必ずみんなの元へ帰ると誓ったと。そう言う士郎に、ファリンは心からの笑顔と共に、一言だけ述べた。
「そのお願い、叶うと良いですね」
そんなこんなで、当初こそ、警戒はされたものの、驚くべきスキルと適応力で月村家に馴染んでいった士郎。
そして、士郎が月村家に来て、ちょうど一週間が経過したとき、その時は来た。
きっかけは、些細な、足りない日用品の買い足しという子供のお使いレベルの代物だった。
「っと、ちょっと遅くなっちゃったか……ん?」
そして士郎は再会する。
小柄な影。かつて図書館で出会った、小さな少女と。
「あれ……はやてちゃん?」
――――全てはきっかけ。
そして再び始まる「錬鉄の魔術使い」の戦い、その幕間の出来事だった――――
Act.7 END
これからもがんばってください。
あと、カラドボルクについてですが爆発はあくまでもブロークンファンタズムによるものであり真名開放にはまた別の効果があります。
以上、重箱の隅をつつくようなことを長々と語ってしまい申し訳ありませんでした。
バサカを殺せたのは「壊れた幻想」での問答無用なランク判定じゃなかったか?
……でもカラドボルクⅡは空間を捩切る程の貫通力を持ってるからなァ。
身体が弱体化(てか若体化)したせいで投影が多少劣化したかも知れんし。慣れない身体やら諸々の理由で想定が甘かったとも考えられる。
ま、士郎は泥を啜りながらも諦めず立ち上がって、ひたすら戦うほうが似合っているから、これくらいで調度いい感じ。
最強設定好きな奴は話がSTS編になるまで我慢しろよ。
宝具に突っ込んでる奴等
Fate単体の二次ならともかくクロスなんだからしかたないだろ
概念がどうのこうの、威力がどうのこうの言ってなんとしてでも士郎を最強にしたいんだったら読むのを辞めて
どっか別なとこで士郎最強物でも読んでりゃいいじゃん、腐るほどあるだろ
別に士郎を最強にしたいわけじゃないでしょ?
クロス物って世界観の違いによるギャップが楽しい物じゃね?
士郎をトリップさせたのだから宝具や魔術とリリカルの魔法とのギャップを出さなきゃ詰まんないでしょ?
上の宝具についてコメは、今の状態だと、宝具に異常な違和感を感じてるけど全然脅威になってなくリリカルの方が最強すぎて何で士郎トリップ物にしたのかわからないからこその突込みじゃないか? オリ主でも全然いいと今のところお思うよ。
士郎をトリップさせたんだからこのSSは宝具を使いたかっただろうし、せめて宝具の特性というか型月の世界観である概念を考慮しないのはクロスの意味ないでしょ?
スターライトブレイカーで結界は粉々になるのは、結界破壊の効果があるのと単純に威力が高い。
偽・螺旋剣とSLBだとSLBのが威力高そうだけど、真名開放してるなら「貫く」事に特化改良されてる概念が付属するんだから、粉々にならなくても貫くぐらいしないとfateの世界観の意味が無くないか?
クロスさせるならクロスさせた意味を出さんと詰まんなくないか?