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Sword of A's Act.13 vol.1

 その日、エイミィ・リミエッタは、今までに無いほどに緊張を強いられていた。

 今までの和気藹々とした空気を打ち破る緊急警報(レッドアラート)。艦長、及び執務官不在の間の艦長代理とオペレータ兼任というプレッシャー。

 だがそれにも況(ま)して、現在の状況は困惑せざるを得ないものだった。

 現在最重要目標のロストロギア『闇の書』を確保する為に派遣されたチームが、魔力確保を目的とする騎士達を発見し、緊急措置命令を流したのがおよそ十分前、時間にして15:02の事。

 フェイト=テスタロッサと使い魔のアルフが現場へと急行し、アルフの方は先日戦ったザフィーラという「守護獣」との交戦をそのまま開始。

 残るフェイトが騎士……シグナムと名乗った、恐らくはリーダー格と思われる彼女と、その蒐集対象なのか、無数の砂竜(サンドワーム)との交戦を繰り広げている地域近くまでの到着を確認した、その時。

 切欠は、砂竜の目の部分に突き刺さった魔力光だった。

 くぐもった悲鳴と共に、それまでシグナムを拘束していた砂竜の方が、堪らずと言った様子で彼女を手放したその瞬間、先ほどの倍する速度と重さで、さらに多くの魔力光が突き刺さり完全に倒れ付したのだ。

 その場でモニターを確認していたエイミィ、そして高町なのは共に、当初は何が起こったのか理解できなかったが、解析の結果から敵の増援であることだけは分かった。しかし、どうにも解せないことがあった。

 現在、モニターでははっきりと二人分、フェイトおよびシグナムの魔力反応を察知している。しかし、この攻撃は行われる瞬間まで……二百メートルの範囲で逐一観測を行っていたエイミィが感知できなかったのだ。

 普通ならあれだけの規模の魔法があれば、モニター外であろうともフェイトなどが状況を把握する事が出来るだろう。ただフェイト自身も感じ取れなかったとの報告は異常である。

 さらに、攻撃時の方向から魔力源の調査を行ったのだが……あろう事か、どれだけ範囲を拡大しても反応は得られ無かった。この時点でエイミィは二週間ほど前の似たような事例があった事を思い出す。

「エイミィさん……」

 先ほどまで無言だったなのはの方もその可能性に気付いたのか、不安げにエイミィを見上げてくるが、敢えてそれに答えず、一瞬で思考を組み立てる。

 増援の可能性はまず間違いないだろう。あの時と同様、遠距離からの攻撃という手段こそ一緒だが、攻撃のレベル自体は下がっている。報告でしかエイミィも考慮しなかったのだが、先ほどの攻撃は高く見積もってもBクラス、平均すればC+程度であろう。だが、それを一斉に……少なくとも十以上の数をほぼ同時に放たれた場合、少々厄介な事になりかねない。

 予想した敵がもし例の謎の魔導師だとした場合……それは決して楽観視出来ない要因となって蟠(わだかま)る可能性がある。

「フェイトちゃん! 一時撤退して! まだそこには確認できない何人かの仲間がいるはず……」

 だが、そのエイミィの言葉も虚しく、モニターに写された状況は最悪なものだった。

『……ごめんなさい。どうやら、簡単には撤退はさせてくれなさそうです』

 モニター上でフェイトはシグナムと対峙していた。どうやら動揺したフェイトの気配を辿られたらしい。

 報告にある通りならばフェイト一人でAAAランクの魔導師を二人かそれ以上相手にする事になる。流石にそれは彼女には酷というものだ。

 そこまで考えた、エイミィの判断は早かった。

「なのはちゃん」

「は、はい」

 傍らで不安そうにしていた少女をフェイトと同じ戦場に送る。

 管理局のレティ・ロウラン提督から回された武装隊には連絡をしているが、応援が到着するまで、どんなに短く見積もっても四十五分程度の時間が必要である。それが戦場では致命傷になりうるのは言うまでもなく、武装隊の準備が整うまでの時間稼ぎは現状、ここにいる戦力で賄わなければならなかった。

 だが、現実は無常にも彼女たちを味方しない。

 再びのアラートと共に、緊急回線から別行動をする騎士……ヴィータの姿が見える。

「!」

「そんな……」

 流石に、この状況は歯噛みするしかない。

 二つの世界はまったくの別……仮にヴィータを最速の動きで確保し、その後にフェイトの元に転移したとしても、三十分以上の時間のロスとなる。

 闇の書を持つだけに恐らくヴィータ側が本命である可能性が高い。流石に放っておくのは得策ではなかろう。

 どうすれば良い?

 そもそも疑問なのは、未だに正体不明の魔導師の方だろう。二週間前から今まで音沙汰がなかった存在が、何故今頃になって守護騎士側に味方する形で現れるのか。それともそれとは別の、また新たな敵対勢力が動いたというのか。

 未だに動きを見せない仮面の男たちの方も気にはなる。それを踏まえて……彼女は一つの、苦渋の決断を下した。

「なのはちゃんは、あの赤い娘の方へ急行して!」

「エイミィさん、フェイトちゃんの方は……」

「うん、分かってる。心配しないで……何とかするから」

 虚勢を織り交ぜつつも、それでも精一杯の笑顔で不安そうななのはに答えつつも、今度はフェイトに向け通信を繋げる。

「……フェイトちゃん、聞こえる?」

『はい』

 即座に応答するフェイトに対し、緊張感で強張った顔のエイミィが続けた。

「ごめん。応援の到着までまだ少し時間がかかりそうなんだ。フェイトちゃんは何とか隙を見て撤退して! 撃破よりも、なるべく脱出を優先して!」

『……わかりました』

「頼んだよ! こっちもなるべく早く準備するから!」

 

 

12月20日 15:13 管理外世界 某所

 

 

 残心の状態から、一拍を置き構えを解く。その瞬間、今まで攻撃の瞬間だけに集中していた魔力が霧散していくのを見ることが出来た。

 これが彼の戦い方なのだろう。いつかのような圧倒的な破壊力は無いが、代わりに恐ろしいまでの精密さと正確さがその中に現れている。

「……どうやら、シグナムが金髪の……フェイトちゃんと交戦に入ったみたいですね」

「え、ええ」

 事も無げに言ってのける長身の男……衛宮士郎を見据え、シャマルの方は困惑顔のまま、歯切れも悪くうなずいた。

 まるで今見えているような言葉だが、実際に見えているのだろう。相変わらず、攻撃以外で魔力を使ったような跡が無い事から、それは明らかだった。

 現在の地点から数キロ離れた場所への正確な射撃といい、遠距離戦限定では、ひょっとしたらヴォルケンリッターは元より、管理局であっても対抗できるのは一握りの存在ではなかろうか。

 本人はその自覚があるのか無いのか……やがてゆっくりとシャマルへ振り返った。

 バリアジャケットで身を包んでいるシャマルからすれば、士郎のその格好は、どうにも戦闘向きとは思えなかった。黒いパーカーにジーパンという姿は普段着と変わらず、事実その通りであったのだが。

 変身魔法で格好を変え、髪型をオールバックにするだけでもだいぶ印象は変わったが(本人は何故か渋面だったが)それだけでは不十分と考えたのか、顔を隠すために目深にフードをかぶっている姿は、ボクシングジムの練習途中の選手のような印象を受ける。

 淡々としたその顔に、シャマルは言い知れない不安を抱きつつ、言葉を交わす。

「管理局に見つかった以上、恐らく彼らもやってくるでしょうね……本当に、構わないの?」

「ええ。管理局の応援も直に到着するでしょうし、行くのならば今しかないでしょうね」

「…………」

 そんな風に気負わずに、達観した物言いをする士郎を、ただ黙って見上げるシャマル。その瞳は僅かな困惑と迷いが見て取れる。

 今から彼が行く道、それは修羅の道にも似た困難なものだ。それを臆面も無く目指す、と言われればシャマルに何かを言う権利は無いように思える。

 だが、それでもシャマルは何か割り切れないものを感じるのだ。それは彼女たちだけではなく、守護騎士達全員の思いではあるが。

 本人はそのことに気づいているのか、いないのか……やがて、タイミングを計るかのように遠く……恐らくシグナムが交戦しているだろう領域を眺めている。

「こっちから合図したら、予定通り実行しましょう……シャマルさん?」

 そんな風に一切を取り仕切っていた士郎が、傍らで見つめるシャマルに対し不思議そうに反応する。俯いて何かを考える様子のシャマルが、やがて独り言でも言うかのようにポツリ、と口を開いた。

「本当に、良いんですか?」

 それが、彼女なりの気遣いであり、本心からの言葉ではあったのだが……それに反応するのは、いつもの士郎の苦笑だった。

「ベストって訳では……いや、常にベストな状況がある方が稀ですけど、俺はこの方法しか思いつきませんでした。実際、馬鹿だと言われるならその通りなんでしょう」

 傍から見れば完璧に仕事をこなしている様で、実際やる事の大半は試行錯誤であったり、どこか不器用であったりと、人間臭い仕草も多々ある士郎である。

 思うに彼の信念は、どこまでも固く揺ぎ無いのだろう。言い出したら聞かない頑固な面もあるが、それ以上に、自分たちの言葉では心すら動かされないのかもしれない。

 あたかも、士郎と自分達が他人同士であるかのように。

 それはシャマルにとって、何よりも歯がゆい事実だった。確かに、結果的には自分たちは彼にとっての他人であるのかもしれないが、自分達との関係をあっさりと捨ててしまいかねない彼の行動は、本来ならば看過できる物ではない。

 だが、今の彼女に何か良い方法が思い浮かぶわけでもない。

「なので、お願いします」

 最早どうして良いかも分からず、そう言ってくる士郎に対し頷きを返すしかないシャマルであった。

 

 

 戦いは一進一退の攻防だった。少なくとも、双方が一方的に蹂躙をするような展開は見受けられない。

 フェイトがシグナムと争う際に用意した「答え」は、一撃でも当たれば撃沈するリスクを負ってでも、速さを極めるということ。これにより、バリアジャケットの防御力をほぼ完全に捨て去ると同時に圧倒的な速さでの接近戦と言う選択肢。

 かつてその姿を見た際に、その通りの言葉を言ったこちらに対し、臆せずこれだけの事をしなければ追いつけないと言い返された時には、流石に買い被り過ぎだとは感じたが……素直に嬉しくもあった。全力を賭しての戦いというものは、やはり騎士冥利に尽きるものだ。

 向こうは切り札を温存しているためか、今はバリアジャケットのパージすらしていないが、短期間で更に出来るようになった相手に、油断は禁物だ。

(そちらがその気ならば……)
 
 時間が無い為にこちらから切り札を切る。カートリッジロードは一個、大量の魔力が、デバイス用の形状記憶合金に流された瞬間、直感的に気付いたのだろう、フェイトの方がやや焦り気味に今までいた場所から飛び退いていた。

 <Schlange form.>

 レヴァンティンの三種形態の一つ、シュランゲフォルム。名の通り蛇(Schlange)のような伸縮性によって、対応する間合いを二倍、三倍に引き上げる反面、扱いの熟練性上昇とデバイス自体の耐久力減少、自身の防御力も減少も考慮しなければならない、正に諸刃の剣と言っても良い代物である。

 何より、殺傷力に関してはシュベルト(剣)フォルムより数段上がるため、普段、特にはやてが主となった際には、有事を除き滅多な事では起動しないようにしていた形状である。

 紙一重でかわしたフェイトが座り込む隙を逃さずに追撃を掛けるシグナム。

 凪払い気味に振った連接剣を、輪を描くかのようにフェイトの周りでとぐろ巻かせ、締め上げるかのように円の半径を狭めつつ鎌首を擡(もた)げた剣先を打ち下ろす。それに対して、フェイトからは一瞬の隙を突くかのように鎌形のデバイス、バルディッシュから魔力刃が放たれた。

「ハーケンセイバー!」

 打ち込んだ余波の土煙で煙る地面を確認せずに、すんでの所で飛び上がりつつそれを避けるシグナム。

 一瞬の後、背後から追撃を加えようとしていたフェイトの目の前で振り返るかのごとく旋回、同時に弾き出した「何か」に対し、フェイトが驚きの声を上げる。

「な……鞘!」

 レヴァンティンの鞘、僅かに紫色に光るそれでバルディッシュを受け流しつつ、流れるかのように顔面へ向けハイキックをするシグナム。間一髪間に合った障壁による防御は、それでもフェイトの小柄な体を吹き飛ばすには、十二分な重さを持っていた。

 だが、そのままただ蹴り飛ばされるほど、フェイトの方も甘くは無い。

<Plasma lancer.>

 魔力変換資質・雷を利用した中距離砲撃を硬直するシグナムに向けて放つ。一瞬の間、今度こそ驚愕の表情を浮べたシグナムに向けて攻撃が炸裂する。

 衝撃と砂埃で空気が振動する。それを満足に見ることも無く着地するフェイト。やや遅れながら、墜落するかのように落ちたシグナムは、しかし見た目ではダメージらしいダメージは受けていない。

 あの一瞬で防御魔法がうまく言ったのだろう。総合的なスピードではフェイトに劣るとしても、瞬発力では良い勝負なのかもしれない。

 少しの距離を置き、対峙する両者。そこには戦場の空気を纏った緊張感があれども、両者では少々趣が異なっていた。

「らしくないなテスタロッサ。ひょっとして、焦っているのか?」

「……いえ」

「無理をするな。本気でこちらに掛かってきているのは分かるが、焦りが太刀筋に出ているぞ」

「…………」

 実際の所、並みの魔導師であれば、フェイトの焦り自体気付かずにやられているだろう。

 騎士として、長い経験を持つシグナムだからこそ持つ洞察力は近からず遠からず当たっているだろう核心があった。表情こそ変らないが、即答できなかった沈黙こそが、その答えだった。

 そして、彼女がそのような表情をしている心当たりは、シグナムが考える上では一つしか無い。

「安心しろとは言えぬが……少なくとも、不慮の事故でも無ければ『あいつ』は攻撃せんよ」

「わかりません。こっちの隙を狙って攻撃する可能性もゼロではありませんから」

「そう言われては反論は出来んがな。まあ、私のような悪人の言う事は信用できなくても当然か」

「……いえ」

 自嘲に近いシグナムの呟きに対し、フェイトは何かを含むかのように口篭るが表情を改める事は無い。それを視界に納め、シグナムの方も静かに気を引き締める。

 思えば、ここに来て曲がりなりにも「勝負」になった人物は二人しかいない。目の前のフェイトと、もう一人は今も何処かでこの勝負を観察しているだろう「あの男」である。

 とは言ってもタイプは全く違う……フェイトが生まれながらの天才肌だとすれば、彼は差し詰め努力型の秀才と言った所だろうか。まあ、本人は自身のことを非才といって憚(はばか)らないが。

 似たような響きだがそこにある溝は深く、フェイトの攻撃を受け切れるかも怪しいのは事実だが、彼女には無い不気味さと言うか……近接戦は兎も角、自分よりも正確な射撃を得意とする時点で、非才というのもおかしな話である。

 それを考えれば、フェイトの方が幾分かやり易いのは事実である。少なくとも、手の内の読み合いでは遥かにこちらの方がマシだ。

「まあ、こちらの言葉は幾らでも疑ってもらって構わん、が……」

 そう言いながら、シュベルトフォルムに戻したレヴァンティンを高く掲げる、と同時、紫色の魔力がまるで円を描くようにシグナムの周りに集まりだした。

「この戦い、そちらが手を抜けば……死ぬぞ。何分未熟ゆえな、手加減が出来ないことは前に言った通りだ」

「っ!」

 明らかな大技の気配に一瞬息を呑むフェイト。相手のペースだと感じたのか切り替えるかのように一、二度首を振りつつ、改めてシグナムへと視線を向ける。

「うん……そうでしたね」

 言いながら掌に魔力光を収束させる。それは高密度の電気流体……一般的な物理法則すらも凌駕した、奇跡の技として顕現する。

 最早双方に言葉は無い。あるとすれば、この戦いに決着を付けんとする予兆、とでも言おうか。

「プラズマ――――」

「飛竜――――」

 それは一瞬の溜めの後、ほぼ同時のタイミングで放たれた。

「――――スマッシャー!」

「――――一閃!」

 黄金色と紫の魔力光がほぼ同時に相手を食らうかのように襲い掛かり、そして先ほどとは比べ物にならない爆発で視界が遮られる。

 爆発音と共に、攻撃が相殺されたのかも確認するのももどかしいと言うように、シグナムが駆け出し……そして――――。

 

 

 土煙が舞う中、一瞬だけ目標を見失うが、彼女自身はさほど気にすることは無く突進する。

 位置は把握している。それに向けて迅速に対応すれば良いだけだ。

 そうして予定通り「あの男」を介入させ、管理局に見せ付ける。それで計画の八割は完了したことになる。

 だが、現実問題としてAAAランク魔導師相手に、そこまでの余裕があるのかと問われたら……答えはNOだ。事実、今の戦いにおいても、決定打を放つどころか有効打すらも程遠い。

 だが、やらねばならない。あの男は自分たちを信じたのだ。せめてもの義理を通すのは騎士の誉れであり……彼自身に対しての有効な援護にもなろう。

 そこまでを一瞬の間思考しつつ、やがて苦笑を顔に貼り付けるシグナム。

 思えば、彼女も相当彼に毒されているのかもしれない。皆を救う……あの男の言い分ではないが、いつぞや諦めたその考えが、何故か脳裏にチラついた。

 許されることではない。

 自分達は相当な罪を犯した。そんな私情を切って捨て、何も罪の無い人々に魔力蒐集を強要した時点で、自分達は犯罪者であることも理解している。

(あいつも……こんな心情だったのか?)

 無論、彼女自身は未だにあの男の心情を完璧に理解しているとは言い難い。

 だが、何者かを救いたいと言う感情は理解できる。極論ではあるが、自分との違いは救うべき対象が大きいか小さいかの違いでしかないのだ。

 刹那の葛藤。それは本当に一瞬だけ彼女の動きを制限し……そして

「!」

 眼前へと仕掛けられた幾つかの魔力に、反応するのが数瞬遅れる。

 それは正確に、彼女の足元を狙い済ましたように攻撃し、しかし踏鞴(たたら)を踏む彼女に危害を加えることはない。

 絶妙すぎる力加減。それは彼女もよく知る方法で……。

 故に、今この場で見ることは有り得ないと、一蹴したいものだった。

 きっ、とした眼光鋭い視線をある一方向へと向ける。

 まるでベールのように覆われていた砂煙が晴れていく。その場に現れた光景に絶句し、焦燥と、若干の不機嫌さをその顔に貼り付けていた。

 そこにいるのは三人、戦っていたフェイト・テスタロッサは勿論、出るとは思っていた例の白仮面もいる。神出鬼没な奴の事である、そのことについては不機嫌さこそあれ、そう驚くことでもない。

 そう、問題は別にある。

 白仮面の右手にはフェイトの胸を貫くかのように伸ばされている。掴み出されているのは……リンカーコアだろうか。

 そして左には――――フードを目深に被った、顔を晒さぬように慎重に行動するもう一人の男。

 目線を隠したその表情からは、何の感慨も浮かんでいないような、冷酷そうな雰囲気を纏った空気があった。両手には彼の愛用である白黒の剣を持ち、今その一つ黒い方の刀を、白仮面が空き手である左手で自身の顔に届く前にガードしている。

 部分障壁の展開か、今もその青い障壁がチリチリと火花を散らすかのように爆ぜている光景を見やりながら、シグナムは一度体勢を立て直し、レヴァンティンを正眼に構えながら呟いた。

「……現状、どうしてそうなったのかを教えてもらえますか? 『主』?」


 

 そう言って、彼……変身魔法で姿の変わった衛宮士郎を仰ぎ見た――――。

 

(vol.2に続く)

 

 

 

 
 

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Sword of A's 13話(1)の誤字指摘
更新ご苦労様です。不躾ですが、読んでいて気になった点を指摘させて頂きます。

>バルディッシュから魔力刃が放たれた。
><Haken slash.>
「ハーケンスラッシュ」は近接斬撃魔法です。
魔力刃を飛ばすのは「ハーケンセイバー」です。

><Plasma lancer.>
>魔力変換資質・雷を利用した中距離砲撃を硬直するシグナムに向けて放つ。
「プラズマランサー」は射撃魔法です。フェイトの砲撃は「プラズマスマッシャー」です。

>実際の所、並みの魔導師であれば、フェイトの焦り事態気付かずにやられているだろう。
「事態」は「自体」ではないかと。「事態」だと物事の成り行きを現してしまいますので。

>思えば、ここに来て罷りなりにも「勝負」になった人物は二人しかいない。
「罷りなりにも」は「曲がりなりにも」ではないかと。「罷り」だと「貴人の前から退く事」ですので、意味が分からなくなってしまいます。

>そこまでを一瞬の後に思考しつつ、やがて苦笑を顔に貼り付けるシグナム。
「一瞬の後」の部分がよく分からないです。
「一瞬の間」なら意味が通ると思います。

取りあえず13話(1)についてはこれだけです。今後も執筆活動、頑張ってください。
黒王 2009/06/28(Sun)13:13:11 編集
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